みなさんへNo60 −コーヒーを丁寧に淹れる時間は前向きになれる時間−

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僕は基本的に毎日お酒を飲みます。
以前は仕事終わりに、一人で立ち飲み屋さんに寄って、30分ほど飲んで帰ることがしょっちゅうでしたが、3年ほど前から、お酒を飲むための寄り道をほとんどしなくなりました。
最近は、夜10時前後に家に帰る日が多く、コンビニで、缶ビールや缶酎ハイを買って帰り、急いでお風呂に入り、寝る時間を気にしつつ、自分の部屋で晩ごはんのおかずをつまみながら、「プシュッ」と開けて、お気に入りのグラスに注いでグビッとやっています。ウイスキーも数種類常備しているので、チビチビ…こっちはしたりしなかったり。
その時間は、僕にとっての本当に欠かせない癒しの時間であり、その時間のおかげで明日も頑張ろうと思えるんですが、最近、平日の朝の慌ただしい時間の中に、前日の夜からワクワクするような時間を追加できていることが、うれしいなぁって思っているんです。
その、前日の夜からワクワクするような時間とは、丁寧にコーヒーを淹れる時間です。

僕にとってのコーヒーとは、お酒に比べて必要性という面ではそれほど高くなく、日々の生活の中にコーヒーが登場しなくても、全く問題ありません。
朝、丁寧にコーヒーを淹れるようになった今でも、そこは変わっていないのですが、ここ数年、コーヒーについていろんなことを知る機会が増え、そうすると必然的に生活の中でコーヒーを飲む機会も増えてきて、多分いつか、僕も丁寧にコーヒーを淹れる日が来るんだろうなと内心ずっと思っていたのですが、それがこのタイミングだったんですね。

僕は、朝5時半に起きて、会社の日は6時58分には家を出ます。
その1時間半の間に、日によっては2つのお弁当を作るというメインの用事があります。
そういう朝の、ルーティン的に過ぎていく時間の中に、起きる時間を早めることなく、コーヒーを丁寧に入れる時間を加えるというのは、めっちゃ大変です。テキパキ動かなきゃ!
丁寧にコーヒーを淹れるためには、実際に淹れ始めるまでの準備がたくさんあります。
①お湯を沸かす、②豆を15g測る、③マグを準備する、④ドリッパーにペーパーフィルターをセッし、それをサーバーの上置く、⑤測ったマメを手引きのミルで粉にする、⑥沸いたお湯をドリップケトルに移し替える…ここまでがコーヒーを淹れるまでにやること。沸かす水を弱火にかけて、沸騰するまでに②から⑤をやってしまうという感じでこなします。
手挽きのミルで豆を粉にするのは少し時間がかかりますが、ハンドルを回す手に、若干の圧力を受けながら豆を粉に変えていく時間は、決して悪い時間ではありません。
そして、福岡にあるSleep coffee and roasterさんというお店の淹れ方を真似しながら、集中して丁寧にコーヒーを淹れるんです。まず、10秒お湯をドリッパーに注ぎ、20秒蒸らし、そこから2分間、計2分30秒で220㏄のコーヒーをサーバーに落とします。

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前にコーヒーをいつ飲んだのか分からないくらいコーヒーに縁がなかった僕が、3年前の4月に、中崎町の北にある「iTohen」という美味しいコーヒーが飲めるギャラリー兼本屋さんに、同じ年の6月に、天六にある「喫茶路地」という小さくて素敵な喫茶店にそれぞれ出会ったのを機に、月に1度は丁寧に入れられたコーヒーを飲むようになりました。
そして1ヶ月半ほど前に、本や本屋さんをテーマにしたインターネットラジオを通じて、Sleep coffee and roasterさんとナツメ書店さんという2つのお店が、毎朝7時に配信されている「朝のコーヒー今日の本」という動画と出会ったんです。
この2つのお店は、若いご夫婦で営まれていて、(Sleep coffeeをご主人が、ナツメ書店を奥さんが同じ建物で営んでおられる)お二人の作る動画を拝見したら、これがまたとっても暖かくて優しくて素敵な動画で、僕は、たちまちお二人のファンになってしまい、単純に一緒にコーヒーを淹れたいと思ったのが、毎朝コーヒーを淹れるようになったきっかけです。
過去のアーカイブも全て観た僕は、コーヒー担当のご主人から、コーヒーにまつわるたくさんのことを、本担当の奥さんからは、大きな本屋さんでは出会うことが難しいかもしれない、小さな出版社の本を中心に、たくさんの素敵な本について、それぞれ教えて頂きました。
そして僕は、余りにもコーヒーに関することを知らな過ぎて、喫茶路地のマスターやSleep coffeeさんをがっかりさせるようなことを何度も言ったり、質問したりしていたことに気付きました。無知って怖いなぁ、申し訳なかったなぁ、って今、思ってるんです。
それは、僕がミルを持っていないせいで、粉にした豆を買う必要があったことに起因します。
焙煎した豆を挽いて粉にしてしまうと、豆より何十倍も空気に触れる面が増えるため、粉はあっという間に酸化して、鮮度が落ちてしまうんですが、コーヒーの味について全くこだわりがなかった僕は、豆でも粉でも、大した違いはない、と思っていたんです。
僕は、飲んでくれる人のために、心を込めて焙煎された豆を、焙煎したご本人に向かって「粉にしてもらえますか?」とずっと言ってきました。
でも、コーヒーの知識が増えるにしたがって、粉で保存することは、せっかくのコーヒーを不味くすることだと身に染みてわかりました。味も風味も急速に落としてしまうんです。
僕が豆を売る側だったら、ミルを持っていないけど、コーヒーをドリップして飲みたいというお客さんがいることを理解していたとしても、やはりちょっと悲しくなると思うんです。
手塩にかけて育てた娘を、大切にしてくれないと分かっているところにお嫁に出す心境?(ちょっと大げさだけど(笑))そんな気持ちになってしまうように思います。
だから、僕は急いでミルを買いました。そしてそれは大正解でした。豆を大切に扱うことができるようになったことはもちろん、ドリップする直前に豆を挽くことで、産地の違うコーヒーの味の違いが分かるようになってきたんですから。そして、ゆっくりできる秋の休日には、この本を本棚から引っ張り出し、読みながらコーヒーを飲みたいと思います。
集中して丁寧にコーヒーを淹れる時間は、僕にとって日々を前向きに過ごすための大切な時間のひとつになりました。みなさんは、そういう時間、持ってますか?作ってますか?

カラーひよことコーヒー豆
小川洋子:著 小学館

Sleep coffee & roaster ナツメ書店

https://natumesleep.com

 iTohen

http://itohen.info

喫茶路地

https://kitusaroji.com