みなさんへNo59 −コオロギさんがうちにやってきた!−

f:id:fujimako0629:20210829133113j:image

うちには小さな庭があるというお話はもう何度もさせていただいています。
もみじの木があって、桜の木があって、シマトネリコユーカリの木、そして多分小鳥の糞に混ざってポトリと落ちた種から発芽したクスノキや、グミや名前の分からない木も…あっ忘れてた、ブルーベリーの木もあって、今年は豊作で、今沢山の実が収穫できています。
元々何にもなかった庭に、ホームセンターから芝生の四角いのを3枚ほど買ってきて引いたのが始まりで、それがどんどん増えて庭全体が芝生で覆われるくらいになって、三宮の駅前で、もみじの苗木を買ってきて隅っこに植えて…なんてしてたらあっという間に19年の年月が経って、何となくいい感じの空間になってきました。今の季節は、蚊の攻撃がすごいですけど。
このことも以前お話ししたと思いますが、うちの小さな庭を、僕が子供の頃に遊んでいた実家のそばの、河原の土手のような雰囲気にしたいと思っています。
植物には土が大切ですから、伸びてきた芝を刈ったり、草むしりをしたり、木の枝を剪定したりしたものは捨てずに、庭の片隅に積んで少しづつ土に返すようにしています。さらにそういう所はきっと小さな虫たちも好きだろうから、そういう虫もひっくるめて、時間はかかっても、少しずつ実家のそばの河原の土手のような庭になってくれたらと思っていました。
本来は、やっかいな雑草の代表格であるカタバミも小さな黄色やピンクの花がきれいだから抜かずにいたら、カタバミの葉っぱを幼虫時代に食べるヤマトシジミもうちの庭を飛んでいます。桜の木には、ハバビロカマキリが3,4匹います。

f:id:fujimako0629:20210829134531j:image

そして、ちょうど立秋を過ぎたこの時期から9月の中旬にかけて、毎年毎年すごく期待していることがあるんです。
毎年今年こそは!と夜、家に帰って窓を開けて、耳に手を当てて聞き耳を立てるのですが、うーんやっぱりだめかぁということが、かれこれ10年ほど続いていました。
それがですね、今年、ようやく聞こえたんですよ!!聞き耳を立てるまでもなく、めっちゃ鮮明に。裏の庭ではなかったんですが、玄関わきのワイヤープランツの茂みの中で。
「リリリリリィ—、リリリリリィ—」って。

 

そうです、僕はずっと8月半ばから9月いっぱいくらいまで、僕のうちの敷地内で虫の声が聞こえないかと、夜になるとほぼ毎日聞き耳を立てていました。
8月11日に聞こえた、多分エンマコオロギの鳴き声は、まさに、玄関の扉の数十センチ先から聞こえてきている声でした。
いやぁ、めちゃくちゃ嬉しかったです!やっとやーみたいな感じでした。

今年初めて虫の声を聞いたのは、うちで聞いたその前日8月10日の火曜日で、会社の近所の中の島公会堂の前の芝生からでした。エンマコオロギの大合唱でした。
その年の第一声を聞いて、あーそうだ、もうこの時期が来たんだなぁと思うんですよね。
良くできたもので、セミの大合唱が収まったら今度は夜の虫たちの出番なんですよ。
今年は特に8月頭に関西を台風が通り過ぎて、急に季節が進んだ感じがしたんですが、そう思ってすぐ中之島公園でコオロギの鳴き声を聞いで、その翌日、うちの玄関わきで同じくエンマコオロギの声が聞こえたので、余計にグッとくるものがありました。

今の時期、うちの実家のそばの川べりの土手は、虫たちの大合唱のはずです。
昼間はバッタ系ですね。ウマオイやキリギリスなどのバッタたちが「スィーチョン」「チョンギース」って鳴いています。
そして夜になると、コオロギやスズムシたちの独壇場になるんです。

 

昔僕が小学生のころ、スズムシを飼っていたことがありました。父親が、どっかからもらってきて、海苔の瓶に砂を入れ、軽石みたいな石を入れて、畑で取れたナスやキュウリや鰹節を餌にしていました。その海苔の瓶は、玄関の脇に置いてあり、「リーンリーン」と1日中スズムシの鳴き声が聞こえていました。秋も深まってくると、交尾を終えたオスはメスに食べられて、雌は瓶の砂に卵を産みます。その瓶を、乾燥しないように気を付けて冬を乗り越え春を迎えると、小さなスズムシの赤ん坊がたくさん生まれてくるんです。
そうやって何シーズンか、うちにスズムシがいました。
当時は、家でスズムシを飼うのが流行っていたのかもしれませんが、家の中から「リーンリーン」と聞こえてくる光景は、今でもいい思い出になっています。
でも、ですね、実際問題として、家から数十メートル離れた川の土手に行けば、野生のスズムシが鳴いていて、飼っているスズムシとは比較にならないくらい美しい声で鳴くんです。
響きだったり余韻だったりが全然違うんですよね。自然の過酷な環境で生きているスズムシはやっぱり瓶の中のあまちゃんスズムシとは違うなぁって思ってました。本当に美しい声なんです。
ということで、ホームセンターに行くと、スズムシを売っていたりするんですが、僕は自然にいる、野生の虫の声を部屋の中から聞きたいなぁと思ってしまうんです。

 

この文章を書き始めたのが8月10日ごろで、今年も大雨の被害が日本各地で起こってしまって、日本の気候がここ数年、本当に大きく変わってきたような気がしています。
もしかしたら、新型コロナウィルスの出現も、地球規模の気候変動が無関係じゃないのではないか?とも思ってしまいます。
日本の美しい風景としてまず思い浮かぶのは、里山の風景ですよね。きれいな山があって小川があって畑や田んぼがあって、その切り取られた里山の風景には4つの季節があります。
その景色から季節の移ろいが消えてしまったら…
それは嫌だから、やっぱり自分ができることをやらなきゃなって思います。ここまで自分で納得しないと、僕は、いろんな決まり事を進んでやるタイプじゃないんです。
そして僕の田舎は、まさにそんな里山の風景そのものの場所なのです。

 

図鑑日本の鳴く虫
奥山風太郎:著 エムピージェー