みなさんへ No.62 ーあいうえおのきー

f:id:fujimako0629:20220304225435j:image1ケ月半ほど前、お気に入りのYouTubeチャンネル「朝のコ ーヒー今日の本 」を観ていたら、レオ・レオニの絵本「フレ デリック」が紹介されていた。

僕はこの絵本を持っているんだけど、長らく見ていない。あ れ?どこにやったっけ? 子供の頃に買ってもらってから大切にしていた絵本で、実家 を離れて一人暮らしを始めてからも、結婚して新しい家族と 暮らすようになってからも、ずっと手元に置いていた。2人 の子供が、それぞれまだ小さかった頃、僕が親にしてもらっ たように、子供たちに読んであげて以降、かれこれ15年く らい僕は、「フレデリック」を目にしていない。

この動画がきっかけで「フレデリック」のことが気になりだ した僕は、いても立ってもいられなくなり、ありそうな場所 を探してみることにした。ターゲットは子供部屋だ。

2人とも、もう二十歳を超えた立派??な大人男子なので、 部屋に入ると、見てはいけないものも見てしまうかもしれな い。 部屋に入られた形跡を残すと、めちゃくちゃおこるかもしれ ない。そんなことを思いながら、1月も終わりのある日、こ っそり、まずは3階の下の子の部屋に忍び込んで、クローゼ ットを開けた。

そこには、お宝がたくさん眠っていた。 大量のウルトラマンと怪獣の人形、プラレール…そんなおも ちゃ箱が積んであるクローゼットの奥に、「フレデリック」 はあった。 f:id:fujimako0629:20220304225650j:image

おー!いきなり見つけたぁ。まず、「スイミー」を見つけて、 その下に「フレデリック」そして、さらにその下に「さかな はさかな」もあった。あーなんか、思い出してきたぞ。

その3冊を持って僕は自分の部屋に戻り、久しぶりに本を開 いた。f:id:fujimako0629:20220304225841j:imagef:id:fujimako0629:20220304230004j:image たくさんの懐かしさと少しの切なさで胸がいっぱいになりな がら、僕は絵本3冊を読んだ。

フレデリック」には、「ちょっとかわった のねずみのはなし」 というサブタイトルがある。 冬に備えて、せっせと食べ物を集めている仲間の野ネズミた ちを尻目に、全く働こうとしない変わり者、いや変わりのね ずみのフレデリックが、蓄えた食べ物がなくなりそうになっ た冬の真っ只中に、仲間の野ねずみたちを、彼が紡ぐ物語で 助ける、というお話だ。

一緒に見つけた「スイミー」のサブタイトルは、「ちいさな かしこい さかなのはなし」。「さかなはさかな」は、「かえる のまねした さかなのはなし」。

このサブタイトルがいい味出 しているなぁと思ったら、3冊とも、日本語訳は偉大な詩人、 谷川俊太郎さんだ。さすが!

 

その3冊の絵本は、1960年台から1970年代にかけて、とも に好学社という出版社から出版されており、当時10冊くら いのレオ・レオニの絵本が、好学社から出版されていたよう だ。

手元にある3冊の絵本のカバーの背表紙の折り返しに、 それらの絵本が紹介されている。

今でも販売されているのか な?

久しぶりにレオ・レオニの絵本を読んで、僕はまだ持ってい ない、当時、好学社から発売されていた、残りのレオ・レオ ニの絵本を探してみたくなった。

 

僕は、古書店を巡るのが大好きだ。 目的がなくぶらぶら古書店を巡るのももちろん楽しいけど、 探したい本があるという目的をもって巡ることはさらに楽し い。 2月の終わりの少し春を感じられた休日に、僕は、元町周辺 の古書店を巡った。その日はそれまでの寝不足がたたり、絶 好調ではなかったから、地元の図書館で雑誌や新聞をめくり ながら1時間半ほど過ごした後、昼過ぎから4つの古書店を 巡って、夕方には家に帰ってきて、あっという間に寝てしま った。

僕の部屋のスツールの上には、今日、新しくお迎えしたレオ ・レオニの絵本があった。

当時、好学社から発売されていた 初版の絵本で、タイトルは「あいうえおの き」、サブタイト ルは「ちからをあわせた もじたちのはなし」。僕はその絵本 をたったの400円で買った。

 

神戸の町周辺には、本当にたくさんの新刊書店や古書店が点 在している。そして、お昼から軽く飲めるお店もたくさんあ る。だから、僕のように一人で本屋を巡り、手に入れた本を 肴に軽く一杯・・・(もう長く一杯はやっていないけど)そんな 本好きにはたまらない場所だ。

その日巡った4つのお店は、少しお疲れ気味の僕の歩く導線 上にあった店で、JR神戸駅かJR元町駅までにある、サンコ ウ書店、神戸元町みなと古書店、本の栞、花森書林。「あい うえおの き」は最後に訪れた花森書林で見つけた。

 

2月最後の日の夜遅く、軽い食事をとりながら僕は、「あいう えおの き」を読んだ。読み終えたときには鳥肌が立ち、神 様に読ませてもらったと、心からそう思った。翌日のために 少しでも早く寝たかったのに、興奮してなかなか寝付けなか った。 あいうえおの きには「もじ」たちが住んでいて、楽しくの んびり暮らしていたのだが、ある日嵐がやって来て、「もじ」 たちの一部が吹き飛ばされてしまった。残された「もじ」た ちは、虫たちの力も借りながら、一致団結して、嵐に飛ばさ れないよう「ことば」になる努力をし、さらに世の中で一番 大事なことが書かれた「ぶん」になる努力をする。 そして「もじ」たちの努力が実り、ひとつの「ぶん」ができ た。その「ぶん」とは、

「ちきゅうにへいわを すべてのひとびとにやさしさを  せんそうはもうまっぴら」

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ね、今読むべき本でしょう?

人それぞれに、人それぞれ分の守らなければならないものが あって・・・

僕は今、限られた情報しか受け取っていないのかもしれない と思ったりもしていて。

だから分かったような事を言うのは正しくないのかもしれな いけど・・・

だけど、武力を使って、自分たちの都合のいいように周りを ゆがめてしまうことは、絶対にあってはならない。唯一の被 爆国で生まれた人間の一人として、ここだけは曲げたくない。

 

僕は、「あいうえおの き」に今、このタイミングで出会えた ことにすごく感謝した。そして「フレデリック」を思い出し たのは、この絵本に出会うためかもしれないとも思った。

 

あいうえおの き(The Alphabet Tree) 

レオ・レオニ:著 谷川俊太郎:訳 好学社