みなさんへNo53 −掃除のお手伝いと谷川俊太郎−

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僕は読書好きですが、そもそも本自体が好きなんです。本のある空間が好きです。本がある空間とは本棚がある空間。そう僕は本棚好きです!(笑)
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うちの本棚以外の本棚を見ると、ワクワクするというか、ドキドキするというか、いろんな本棚をたくさん見てみたいと思うから、僕は、ほぼ毎週末図書館に行くし、本屋さんに行くんだなぁって最近しみじみ思っています。
緊急事態宣言が発令されていた今年の4月から5月にかけて、僕は1カ月以上本屋さんや図書館に行けなくて、それが一番つらくてしんどい事でした。
家にいる時間が増えたとか、外でご飯を食べたりお酒を飲んだりする機会が減ったことなんて、僕にとってはそれほど大したことじゃなくて、多くの人が外出を控えることで、本屋さんをはじめとした大好きなお店が、大変なことになっていることに心を痛めていました。
このコロナ禍の中、僕らはどんな行動をとればいいのでしょう?
僕の一番苦手な場所は「人混み」です。だから、用事もないのに人の多い場所に行くことなんて絶対にありません。でも、お客さんが来なければ、お店は成り立たないですよね。
特に年の瀬の今、居酒屋さんなどの食べ物屋さんは1年で一番のかき入れ時だから、本当に大変なことだと思います。
とはいえ、客になりうるはずの僕たちも感染リスクのことを考えれば、たくさん人がいる場所にはできるだけ行かないようにすべきだと思います。これ以上医療に従事している人たちの疲弊度を上げることは絶対にしてはいけないことだから。
インフルエンザウィルスに感染したことが原因で亡くなる方は、日本で年間1万人以上いらっしゃるとニュースで知りました。新型コロナウィルスと単純に比較してはいけないし、比較できないことなんでしょうけど、やっぱりちょっと考えてしまいますよね。

そんな初冬を迎えたこの1ヶ月、新型コロナ第3波、なんて叫ばれている中、僕は、週末も仕事の日が多く、ストレスがたまりかけていたんですが、2週続けて休日には本棚がある空間に好きなだけ居られる時間を作れて、それはとても心が落ち着くいい時間でした。
僕が月に2回は訪れるお気に入りの街、神戸の元町周辺にはたくさんの古本屋さんがあります。10件以上あると思います。
西元町駅のあたりから三宮に向けて、休日に古本屋さんをめぐる3時間くらいの一人の時間は、僕にとっての癒しの時間です。
こんな時期だから、元町周辺の人通りも例年ほどではなく(ルミナリエも中止になってしまいました)、密にならずに古本屋さん巡りができます。さらに繁華街からちょっと外れた場所に店を構える古本屋さんも多くて、入ったことのない路地を歩きながら、感じのいい雑貨屋さんを発見したりして、そういうことも含めて、本当に素敵なリフレッシュタイムなのですが、この度、そんな元町にある大好きな本屋「1003」さんがお店を移転されることになり、12月5日の土曜日に新しいお店の掃除のお手伝いに行ってきました。
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「お手伝いしますよ〜」とお声がけしてはいたんですが、本当にお手伝いできるとは思っていなくて「お願いできますか?」と遠慮がちにお話をいただいたときには、「何をおっしゃいますやら!」とノリノリで新しいお店に伺いました。
新しいお店は、今のお店の南東に徒歩5分ほどの距離にあります。そこは、神戸の新しいスポットとして注目を集めている「乙仲通り」に面しているので、若いお客さんがたくさん来てくれそうな場所です。元町駅からも10分以内で着ける距離でめっちゃ便利。
5階にあるお店のドアを開けると、そこは思ったより広々とした空間。壁を黒く塗られたその空間はとてもシックな印象で、すでに店主さんのご主人手作りの本棚が10台くらい置いてあります。南側の壁が全部窓になっているので、日当たりもすごくよくて、どんなお店になるのか、イマジネーションが勝手に膨らんで、その日僕は、本棚、床、南側の窓の掃除をしたのですが、掃除中ずっとワクワクしっぱなしでした。
3時間半という短いお手伝いの時間でしたが、みんながいっぱい我慢をしなければならない今だからこそ、こういう形で大好きなお店の役に立つことができて本当によかったなぁって思ってます。僕の中で、より特別なお店になりました。

今回は、「店」と「客」という言葉が頻繁に出てきました。
客を待つ店と店に行く客、どっちが偉い?って質問に、「客」って答える人、結構いると思うんですけど、皆さんはどう思いますか?
僕は、一緒だと思うんです。どちらも同じように与え、与えられる関係ですから。
「一緒」という言葉には「同じ」という意味があります。そして「一緒」という言葉から、思い出す詩があります。谷川俊太郎の「地球へのピクニック」という詩です。この詩に出てくる「一緒」という言葉はきっと、「色々違っても僕らは同じ」という意味だと思うんです。

地球へのピクニック

ここで一緒になわとびをしよう ここで
ここで一緒におにぎりを食べよう
ここでおまえを愛そう
おまえの眼は空の青をうつし
お前の背中はよもぎの緑に染まるだろう
ここで一緒に星座の名前を覚えよう

ここにいてすべての遠いものを夢見よう
ここで潮干狩りをしよう
あけがたの空の海から
小さなひとでをとつて来よう

朝御飯にはそれを捨て
夜をひくにまかせよう

ここでただいまを云い続けよう
おまえがお帰りなさいをくり返す間
ここへ何度でも帰つて来よう
ここで熱いお茶を飲もう
ここで一緒に座つてしばらくの間
涼しい風に吹かれよう

こんな時だからこそ、ぜひ、お気に入りの本屋さんで、ひとりで本棚をゆっくり眺めてみてください。素敵な本がきっと見つかりますから。

谷川俊太郎詩集 
谷川俊太郎:著 角川春樹事務所