みなさんへNo56 −気象予報士さんのお仕事から自分らしさについて考える−

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僕は立ち飲み屋さんが好きで、仕事終わりにフラッと寄っては、瓶ビール1本に熱燗か焼酎を一杯、湯豆腐やポテサラをあてにカーっと飲んで、30分ほどでサッと店を出る、そんな寄り道を頻繁にしていました。フラッ、カー、サッです(笑)
その時間がいい気分転換になっていたし、勉強の時間でもあったし、今でも付き合いのある大切な友人と出会わせてくれた時間でもあったのですが、4年ほど前から年に数回しかそういう時間を持たなくなり、今では、コロナ禍の影響も加わりもっぱら家飲み専門です。
そんな僕なのですが、3年ほど前から仕事終わりに、それほど頻繁ではないけれど、立ち寄る場所ができました。10数人で一杯になる、小さな喫茶店です。
3年前の6月に、大好きな絵描きさんの個展がその喫茶店で行われると知り、絵を拝見しに寄せてもらったのが最初です。
そのお店は、天神橋筋六丁目駅に近い、昔ながらの民家が立ち並ぶ路地の中にあります。その名も「喫茶路地」。
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お酒の嗜好は多少表現できる僕なのですが、コーヒーの味は、苦い、酸っぱいは分かっても、それが口に合う口に合わないということがよく分からないので、喫茶店やカフェに一人で行くということがほとんどなかったのですが、「喫茶路地」で過ごした時間は、ナット・キング・コールの歌声が静かに流れる穏やかな時間で、とてもリラックスできたんです。
そしてマスターと僕が同郷だということで話も弾み、僕はこの喫茶店が大好きになりました。
今は、夕方6時にお店が閉まってしまい、仕事の後立ち寄ることはできないのですが、当時は夜8時まで開いていて、会社帰りでもお店に寄ることができていたんです。

昨年の12月、その喫茶路地のマスターから、数名の常連さんを土曜日の閉店後店に招待し、情報交換会を兼ねたささやかな飲み会を企画しているとお声がかかり、僕は、喜んで参加させていただくことにしました。
飲み物はマスターが、食べ物は参加する我々が準備し、マスク着用と窓開け換気はマストで行うというルールで、1時間程度懇親しようというその企画は、昨年の12月19日の夕方6時半から行われ、僕は、生ハムとスモークチーズを持って参加しました。
参加したのは、マスターを含め6名。
大手製薬会社で薬の研究開発をしているという男性と、文化人類学者の女性のご夫婦、将来カフェの開業を夢見ているWEBデザイナーの女性、マスターと僕、そして気象予報士をしているという30代半ばの男性。みんな30代以下。僕だけ50代。多彩なメンバーです!(笑)
マスターが準備してくれた、ビールやハイボールをそれぞれ手にして、一人一人自己紹介しながら、ささやかなその会は始まり、持ち寄った食べ物を共有するうちに、少しずつ打ち解け、楽しいひと時となりました。
文化人類学者の女性は韓国の方で、お葬式の研究をしているとのこと。
その方のご主人からは、新しい薬の開発にまつわる苦労話をお聞きしたり、一番若い20代前半のWEBデザイナーの女性の、自由奔放なお父さんの逸話をお聞きしたりと、楽しく興味津々の話をたくさんお聞きしていたら1時間くらいあっという間に過ぎてしまいました。
そして、気象予報士をしている佐藤さんという男性、僕はマスターに彼を紹介されてから、彼のことがずっと気にかかっていました。
気象予報士…佐藤さん……もしかして俺知っる?…
彼の声を聞いているうちにやっと気象予報士佐藤悠が繋がりました。僕は、佐藤さんのことを知っていたのです。嬉しくなった僕は、彼の話に割り込み、
「思い出した!佐藤さん、ラジオ番組で天気予報をしてませんか?」
そう言うと、佐藤さんは「えっ?」とびっくりした顔になり、僕が、「ABCラジオの夕方の番組ですよね。佐藤悠さん」と言うと、「うわぁ!お聴きになっているんですか?」と。
気象予報士である佐藤悠さんは、ABCラジオの火曜日の夕方の番組で天気予報のコーナーを担当されている方で、僕はその番組が好きで、ラジコのライムフリーで聴いていたのでした。佐藤さんは、ラジオを聴いて自分のことを知っている方に初めて出会ったと、ちょっと照れながら僕に言ってくれました。

その佐藤さんと、3月27日の土曜日に喫茶路地で待ち合わせをしました。
気象予報士という仕事についてとても興味があったので、たくさんお話をお聞きしたのですが、どうすれば視聴者に天気予報や季節の話題を正しく、わかりやすく伝えることができるか、興味を持ってもらえるかということを、常に考えておられる姿に、もっと言えば、そのことしか考えていないというくらいの必死な姿にとても感銘を受けました。気象予報士さんが番組で話すことは、作られた原稿ではなく、気象予報士さん自ら作っていたんですね。
春は、梅や桜といった花の情報が天気予報と一緒に伝えられることが多いですが、佐藤さんは、自分の足で梅や桜の名所を歩いて回り、その時に五感で感じたことを元に手書きの資料を作り、リアルな生の情報を天気予報の時間に伝えておられるということでした。でも、よくよく考えてみると、ラジオ番組での天気予報なので、丁寧に作った手書きの資料を、聴取者の人たちは見ることができないんですね。それでも、心を込めた手作りの資料を準備して、番組の出演者に見てもらうことで、その人たちの協力も受けながら、少しでもよりよく伝わるように、聴取者の方が一人でも増えるように、たくさん考えて工夫されているんです。
心から見習わなきゃなぁと思いました。お客様に信頼されることって、こういった「自分らしさ」を大切にした地道な努力の積み重ねで得られることなんだなぁ、と再認識させてもらったんです。
そして「うちの会社らしさ」とは何だろう…とも考えました。何だと思いますか?

春は美しい花の季節でもありますが、冬を乗り越えた小さな植物が芽吹く季節でもあります。春になるとこういう本を手に取って、佐藤さんのように緑の中を歩きたくなります。

草の辞典 〜野の花・道の花〜
森乃おと:著 雷鳥社

追伸

喫茶路地さんの情報は「kitusaroji.com」と検索してください。

気象予報士佐藤悠さんは、この4月から朝日放送の情報番組「おはよう朝日土曜日です」のお天気コーナーを担当されています。