みなさんへ No.10 −桜− 2017.04.26

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> なんだかんだと10回続きました。
> 皆様ありがとうございます!
> No.10です。
>
> 6年前の2011年の春、桜の木を庭に植えた。
> ノンベェの僕は、桜の花を独占して一人お花見がしたかったからだ。
>
> 当時僕は、今よりずっと一生懸命国家試験の合格に向けて勉強をして
> いた。
> 8月の試験のために学校に通いながら本格的な勉強を始めるタイミン
> グが5月で(当時、もう2年近く勉強をしていて前年の試験はダメだ
> った)12月の合格通知を受け取り、そして次の春、幸せな気分で一
> 人お花見をしようとたくらんだのだ。
>
> その年の12月、僕は不合格通知を受け取った。
> あれだけ頑張ったのにまだ駄目なのか…と強く落胆した。
> そして桜を植えて迎える最初の春、その桜は花をつけなかった。
>
> 翌2012年8月の試験に向けて、僕は仕事と寝ている時間以外はず
> べて勉強に充てるくらいの気構えで勉強して、12月に3度目の試験
> でようやく合格通知を受け取った。
> しみじみ、本当にうれしかった。
> そしてすごく期待していたのだけれど、その次の年の春も、その桜は
> 花をつけなかった。
> その次の春も、その次の春も、そして去年の春も…
>
> 3年ほど前の2月ごろから、何年間もたくさんの桜の木を観察してい
> る。すると、小さくて硬くて茶色のあのクチュクチュの芽(越冬芽と
> いうんだそう)が葉っぱになるのか蕾になるのかが大体わかってくる。
> 僕は今年も花はお預けだとあきらめていた。家の近所のあちこちにあ
> る桜のつぼみになる越冬芽とは明らかに形が違っていて、去年同じ形
> の越冬芽だったからだ。
>
> 3月の半ば、少しずつ越冬芽が膨らんできて芽の赤ちゃんになり、3
> 月も残り一週間となった週末、葉っぱになるはずの少し緑色になって
> きた赤ちゃん芽がいつもの年より膨らんでいるように見えて、目を凝
> らしてよく見ると、なんと先っちょがピンクになっている赤ちゃん芽
> が!!もとい、赤ちゃん蕾が!!
> うちの桜は、早い時期では葉っぱになる越冬芽と蕾になる越冬芽の形
> が同じタイプの桜だったのだ。
> ピンクの越冬芽を見つけたときの喜びといったら…
> 桜の木を植えて6回目の春、ようやく、本当にようやく僕の夢がかな
> う。
>
> そして、この文章を書いていて思い出したことがある。
> 2011年、僕が桜の木を植えようと思ったのは、冒頭に書いたよう
> に静かに一人お花見をしたかったからなんだけど、それだけではなか
> った。
> 東北の被災地の桜の花を見たからだ。
> 2011年の3月11日に東北の地から送られてきたあの映像、22
> 年前に神戸で同じように被災した僕にとって忘れることができない。
> 忘れようにも忘れられない。
> その年の4月の半ば、東北の地にもいつもの年と同じように春が訪れ、
> いつもの年と同じように桜が咲いた。
> だけど、その景色は違っていた。
> 何もかも流された土手に咲く桜。悲しげなんだけど、とても美しかっ
> た。
> これだけのことが起こったのに…みんな悲しみに打ちひしがれている
> のに、季節は当たり前のように、ある意味容赦なくちゃんとやってく
> るんだ…と思った。
> 僕はテレビから流れるその絵を見て、桜の木を植えようと思った。
> そして4月4日、幸せの日に僕はひっそりと自分の部屋の庭に通じ
> る窓を開けてお花見をしました。あの日見た東北の桜を思い出しな
> がら。
>
> さて、今回ご紹介する本は、仕事とかには全然関係のない、ただ、
> なんて言うのかなぁ、かっこいい本です。
> 今でも、ちゃんと新潮文庫から発売されている本なんだけど、僕は、
> 1970年代以前の本を古本屋さんで探していて、ついにというか、
> 今まで見落としていたというか、月に1度は訪れる本屋さんで本棚
> を眺めていたら、不意に「伊丹」という文字が目に入ったんです。
> そしてじっくり探していると、見つけちゃいました。
> 伊丹十三さんの「ヨーロッパ退屈日記」です。キタァって感じ。
>
> 実は、僕は伊丹十三さんのことはよく知らなくて、映画「家族ゲー
> ム」のお父さん役だった人で、映画「マルサの女」を撮った人、く
> らいの知識だったんです。
> 数年前、ある本の中でこの本が紹介されているのを読んで、とても
> 興味がわきました。
> 僕の大好きな作家、開高健さんや山口瞳さんにもつながっている人
> だったんです。
> そして、1965年この本が文芸春秋社ポケット文春という新書
> として発売されたときの伊丹さんの芸名が「伊丹一三」。十じゃな
> くて一だったんです。知らなかったでしょ?
> 1967年に「マイナスをプラスに変える」と芸名を「十三」に改
> 名されたそう。
>
> この本は、1974年に同じく文芸春秋社から発売されている新装
> 版第1刷なので、「伊丹十三」になってはじめて刷られた本なのか
> なぁって思ったりしています。
>
> 「ヨーロッパ退屈日記」ば、伊丹さんが役者になってすぐのころ、
> 海外の映画に出演されたときの撮影の舞台となったヨーロッパでの
> 日々を纏められたエッセイです。
> 当時は、リアルな欧米の情報などほとんどなかった時代で、軽快な
> 文体で書かれたこのエッセイは若者を中心に大ヒットしたというこ
> とです。
> わかる気がするなぁ。
> まだ30ページくらいしか読んでいないんですが、当時の若者はワ
> クワクしながら読んだんだろうなって想像できます。
> さて今晩、家で一杯やりながらページをめくるのが楽しみです。
>
> 「ヨーロッパ退屈日記」 伊丹十三著 新潮文庫