みなさんへ No.41 -短い秋を感じよう!-

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今年は秋がめちゃくちゃ短かったですね。
半袖からいきなりセーターみたいな感じで季節が進んだ気がします。トレーナーの出番少なくありませんでしたか?(笑)
僕は、四季の中で最も好きな季節はと問われたら「秋」と答えます。僕にとって秋は一番心が豊かになる季節のような気がします。若いころほどではないですが、ワクワクする冬のイベントを待つのも楽しいことですし。
春も、梅や桜、様々な花が咲き始め、「始動」を連想する季節で好きなんですが、すぐそこに見え隠れしている夏の存在がねぇ…
歳を重ねるごとに夏という季節の「好き度」が下がってきているように思います。特に、連日35度を超え、集中豪雨がやってくる夏をここ数年経験して、自然現象に異常も何もないよな、と思ってはいるものの、どうか来年の夏はほどほどに…と祈ってしまう、そんな季節になってしまいました。
そんな夏にこれから突入していく春よりも、おでんに熱燗、お鍋にビールの冬がすぐそこで待っている秋の方が、僕にとっては、心が豊かになるというか、ちょっと楽しい気分になるんです。だから今年は少し物足りない感じがしています。

子供のころ、家のそばの神社の落ち葉掃除を毎年していました。近所の子供たちが集まって、竹箒や熊手を使って境内の落ち葉をかき集めて掃除をするんです。
その神社には大きなイチョウの木があって、秋が深まると神社の境内が黄色一色に染まりす。
その景色、それはそれでとても綺麗なのですが、放っておくわけにはいきません。お正月に備えて、守ってもらっている神様のお住まいをピカピカにするのが、近隣住民の役目です。
落ち葉をかき集めて焼くのですが、掃除の最中、僕ら悪ガキは、イチョウの葉を投げ合ったり、せっかく集めたイチョウの葉の山に飛び込んだりして真面目に掃除をしません。すぐに遊び始めます。そして度が過ぎると、周りの大人たちの雷が落ちます。「いい加減にせぇ!」と。

境内の隅に集めた落ち葉の焚火が一段落したら、ご褒美の焼き芋&甘酒タイム。
イチョウの葉を焼いた後の種火が残った灰で、大人たちが焼き芋を焼いてくれて、神社の囲炉裏で甘酒も沸かしてくれるのです。みんなで食べる焼き芋と甘酒の美味しかったこと。
神社は田んぼに囲まれています。それぞれの田には刈った稲が干してあったやぐらが残っています。いたるところに柿の木があり、柿の実がおいしそうに熟しています。周りの山々は紅葉が進み、赤や茶色、黄色に染まっています。空は高く鱗雲。
山間の小さな集落の秋の風景です。鼻たれ小僧たちと、ほっぺが真っ赤な女の子たちの懐かしい思い出です。

この文章を書いていて、僕が、なぜ秋が好きなことが分かったような気がしました。
僕は、自宅の周りには田んぼと畑と山と川しかないようなところで育ちました。うちは農家ではなかったけれど、父方の家も母方の家も大きな田んぼをも今でも持っています。
秋は収穫の季節。ということで、秋は周りの大人たちの機嫌が一番良い季節だったんです。だから秋から冬にかけてが、一番ご馳走が食べられたんですよ、きっと。
新米のごはんはおかずがいらないくらい甘くておいしいし、栗ご飯も大好物、脂ののった子持ち鮎の塩焼きはちょっと大人の味、山陰産の蟹、今となっては贅沢だけど、松茸も今ほ
ど口に入らない食べ物ではありませんでした。とはいっても子供の口には、それほどおいしいものではありませんでしたが。

現在に話を戻して。
うちの小さな庭も今が秋本番です。桜の木、モミジの木それにブルーベリーの木、それぞれの葉っぱが赤く染まっています。
地面も桜の葉っぱで赤く染まっています。
本当に小さな小さな庭だけど、秋の彩は、春の桜の花に負けていません。
11月の終わりの週末、まだ明るい夕方4時ごろ、真っ赤なモミジとブルーベリーを眺めながら、地面の落ち葉を拾い集めている自分を想像しています。そして、窓際においてあるスマホからは、「枯葉」という曲が流れています…
「枯葉」(Les Feuilles mortes、Autumn Leaves)を聞いたことのない方はたぶんいないんじゃないでしょうか?タイトルは知らなくても、聴けば皆さん知っている曲です。
ほんのり切ない秋の雰囲気がよくあらわされているシャンソンの名曲です。
イブ・モンタン(Yves Montand)やエディット・ピアフ(ÉdithPiaf)、ナット・キング・コール(Nat King Cole)など、超一流の歌手に歌い継がれているのですが、僕は、ローラ・フィジィ(Laura Fygi)の「枯葉」が一番好きです。YouTubeで聴けますので、是非聴いてみてください。

さて、今回ご紹介する本は、写真集です。
「ACCUMULUS」(蓄積)というタイトルのこの写真集は、1988年、約30年前に出版されたものなので、「どうぞ本屋さんで…」と言える本ではないのですが、秋の夜長にぴったりの写真集です。なんと写っているのは落ち葉だけ。ページを捲ると、落ち葉しか出てきません。でも、幻想的というか、美しいんですよね。正に今この季節、秋にページを捲るべき写真集です。
みなさんも、どうぞ短い秋を堪能してください。季節の移り変わりを五感で感じてください。神戸の9月1日の日の出は5時32分、11月30日の日の出は6時46分。確実に季節は移ろっています。

ACCUMULUS 〜Earthwork of Fallen Leaves~
MASAO OHTA:写真 スーパーエディション