みなさんへ No46 -今の我慢を今後の人生に生かすために、今は内にいよう-

f:id:fujimako0629:20200430201957j:image随分朝が早くなって、夜の訪れが遅くなってきた
僕の住む阪神間では、ソメイヨシノが葉桜になり、濃いピンクの八重桜の見ごろもあっという間に過ぎ、今、ハナミズキの花が満開だ。
そんな春爛漫の4月の終わり、僕たちはできる限り内にいる生活をしなければならない。
でも、それは仕方がないことだ。こうなった以上文句を言っても何の解決にもならない。
今、僕は在宅で仕事ができる日はできる限り在宅で仕事をするようにしている。もうちょっと突っ込んで言えば、在宅で仕事をしなければならないと思っている。
もし新型コロナウィルスに感染し、発症してしまったら、見ず知らずの人にうつしてしまうかもしれない。その方が重症化して亡くなってしまうかもしれない。そんなこと想像もしたくない。そして、今まさに最前線で未知のウィルスと戦ってくださっている医療に従事されている方の負担を増やすことになってしまう。こっちも絶対に避けたい。
自分の事より、この2つが現実になる方がずっとずっと怖い。
ということで、今はできる限り内にこもる必要があると思っている。

僕は、一人でいることが嫌いではないので、今のところ内にこもる生活はそれほど苦ではない。あくまで今のところだけど。
会社で仕事をして、夜の9時10時に家に帰っても、家族がいる居間ではなく自分の部屋で一人食事をする。家族の中で僕が一番感染リスクが高いと思うから。
狭い自分の部屋で丸1日過ごしていても、ありがたいことに窓の外には小さな庭があって緑が見えるし、時々、うちの近所を縄張りにしているノラ猫やスズメやメジロシジュウカラなどの小さなお客さんがあり、ちょうどいい気分転換になっている。
部屋にこもることの苦痛はそれほどないが、苦痛なことが一つある。本屋と図書館が閉まっていることだ。少なくとも、僕の行動範囲内で、僕が行ける時間に開いている本屋を僕は知らないし、図書館はすべて閉まっている。
そんな中、僕の行動範囲内の本屋ではないが、感染リスクと戦いながらお店を開けている本屋さんがある。
谷町六丁目にある、隆祥館書店さんだ。この本屋さんには3年半ほど前の懇意にして頂いているエッセイストの武部好伸さんのトークイベント(正確には「作家と読者の集い」)で初めて寄せてもらった。
お父様からお店を引き継がれた社長の二村知子さんは、元シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)の日本代表選手だった方。あの井村監督の厳しい指導を受けたスポーツウーマンだ。
それ以来、なかなか立ち寄ることができなかったが、SNSなど発信されている情報は常にチェックしており、今回どうしても応援したいことがあって、先日久しぶりにお店に伺った。

隆祥館書店さんは、4月18日にあるイベントを企画されていたが、緊急事態宣言が出され、イベントは中止に追い込まれてしまった。そのイベントのフライヤーには、イベントを行うきっかけがこんなふうに記されていた。 f:id:fujimako0629:20200430201935j:image
——コロナウィルスで、プロスポーツ、コンサートや演劇の延期や中止が相次ぎました。さらには幼稚園や学校が休校になりました。(注略)そんな折、地域のお客様が来られ、「図書館も閉館になったからもうどこにも行けないの。本屋さんが近くにあって良かったわ」と言ってくださったのです。このような非常時の際に地域の本屋だからできることは何だろうか。改めて悩み、考えました。自粛が続いている今だから
こそ、本に親しんでいただく場の提供はどか…——と。イベントのタイトルは、「文化のインフラとしての本屋のあり方」。
4月18日は、会社のイベントが延期となった土曜日で、このイベントに参加しようと思えばできたが、やはりそんな単純な問題ではないと、参加を見合わせていた。
今街の、私たちの「生活インフラ」を支えてくれているお店や交通機関、そして病院や医療関連以外のお店の多くは自主的にお店を閉めている。不要不急の外出を控えてほしいという政府の要請に同調してのことだ。
でも、少しでも前向きに内にいることを支えてくれる道具として、本はとても有用なアイテムではないか?本屋は開いてなくても本は買える、という声が聞こえてきそうだが、僕はそういう本の買い方はあまり好きではない。
二村さんは、「文化のインフラ」が本屋だという。僕もそう思う。そして、この言葉が僕の思いを発展させる。生活から文化が生まれ、生まれた文化が新しい生活を支えるのだ、と。
僕のような本好きの、今感じている苦痛を少しでも和らげるために、感染リスクと戦いながらお店を開け、世の中に役に立つことを必死に模索している本屋さんがあると知っただけで、どれだけ嬉しかったか。
「閉める」、「開ける」相反する2つの決断は、どちらも勇気がいることで、どちらも尊敬に値する立派な決断だ。僕は「開ける」という選択をした隆祥館書店さんを応援したくて、この本「13坪の本屋の奇跡」を買いに行った。「閉める」という決断をした多くの本屋さんは、SNSなどを使い自分にできる応援をしていきたい。

さてこの本は、「オシムの言葉」でミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞したノンフィクション作家の木村元彦さんが隆祥館書店さんに密着して書いたノンフィクション。
街の本屋さんが次々と無くなっていく中で、その原因となっている出版業界の問題点と戦いながら、我々庶民の「読みたい」に寄り添ってくださっている隆祥館書店さんを始めとする、頑張っている街の本屋さんに明るい未来が訪れてほしいと心から思う。
そして僕らも、我慢を強いられる今だからこそ、お客さんや仲間に迷惑をかけない工夫をいっぱい考え、自分にできる最善のことをしよう。ピンチをチャンスととらえよう。
今の我慢を今後の人生に生かすために、今は内にいよう。

13坪の本屋の奇跡 
木村元彦:著 出版社:ころから