みなさんへ No.29 −生きている実感ありますか?− 2018.11.30

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> 僕は文章を書くことが好きです。
> だからこうして月に一度、皆さんにメールを送ることも無理
> なくできていますし、僕にとって文章を書くことは、自分の
> 本心を知る大切な行為でもあるんです。
> ただ、文章を書くことで嫌なことが1つあります。それは議
> 事録を書くこと。議事録を書く仕事だけは本当に苦手です。
> できれば逃げたいです。書きたくない…それが本音です。
> 月半ばの月曜日、朝8時から始まる約4時間の会議、ソニー
> 製のICレコーダーを机の上において会議を録音し、それを
> 再生しながら文字に落としていくんですが、それはそれはし
> んどい作業です。
> ぼそぼそっと小さい声でしゃべる人、活舌があまりよくない
> 人…いろんな人がおられます。
> さらに困るのは知っている人にしか分からない言葉がしょっ
> ちゅう飛び交うこと。IT業界のバリバリ専門用語は、専門
> 外の僕によくはわからないんです。
> 最近よく会議中の話の中に出てくる「CMS」という言葉、
> その筋の人でないと、普通分かりませんよね。「コンテンツ
> マネジメントシステム」の略だそう。
> さらに、会社名を縮めたり、略称で話されたりした場合も困
> りもの。「データ関西」といわれて、正式な会社名から頭の
> 「NTT」が省略されているなんて、やっぱりその筋の人じ
> ゃないと、わからないと思います。
> そういうところでいちいち立ち止まり、調べ、さらに聞きと
> れない声を必死に聞き分け、何度も巻き戻しを繰り返して…
> それでも何をしゃべっているのか分からない!
> うぎゃぁ!って叫びたくなることもしばしばです。(笑)
> ほぼ毎週月曜日には、朝8時から会議があり、そのうちの1
> つの会議の議事録を僕が書いているのですが、毎月この日が
> 近づくと、ちょっと憂鬱になっていました。
>
> そんなふうに議事録を書き始めてもうじき4年、先月あたり
> から、心境が少し変わってきたんです。議事録書きがそれほ
> ど苦じゃなくなってきたというか、分からないことが出てき
> ても、うぎゃぁ!とならなかったり、読みやすいように書か
> なきゃと思ったりして。
> 今までは、そんなことを気にする以前に早く書き終わりたい、
> 早くこの環境から抜け出して解放感を味わいたい、そんなこ
> とばかり考えて書いていたので、逆に時間が進むのがめっちゃ
> 遅くて、書いても書いても終わらないという感じだったので
> すが、時間が経つのも早くなってきて、最近、自分の心の持
> ちようが変わってきたように思うんです。
> 結局僕は、議事録を書く仕事は「嫌だ」が先に来てしまって
> 「読む人のために」、という本来目指すべき道筋が、「なんで
> もいいから早く終わらせたい」に方向転換していたんです。
> 僕はこうしてみなさんに対して、毎月仕事に絡めて分かった
> ようなことを言っているのに、こんなんじゃ全然あかんやん、
> と反省しつつも、嫌なことでも放り出さずにきちんと向き合
> っていれば、4年かかってしまったけど、取り組む気持ちは
> 変わってくるんだなぁと、ちょっと嬉しい発見でした。
>
> ところで、先日、画家で絵本作家のミロコマチコさんのライ
> ブペインティングとトークイベントを拝見してきました。
> ミロコマチコさんは、「オオカミがとぶひ」という絵本で、
> 2012年の日本絵本賞大賞に輝かれた日本を代表する画家
> であり絵本作家さんです。
> トークイベントでミロコさんはこんなことをお話されました。
> 「絵を描いている以外の時間にあまり実感がないんですよね。
> その時間にやっていることは本当に自分で選んでやっている
> ことなのか?って思うことが多くて。
> 言われたからやっているんじゃないかみたいな感じ?常識的
> なことをしないと恥ずかしいよ、と言われたりすると、みん
> な本当はやりたくないけど、自然にそっちを選んでいるだけ
> みたいなことがいっぱいあるように思うんです。それが、絵
> を描いているときには、ここで私がしたいと思うことができ
> るという実感があって、その時間が一番生きているという感
> じがする。生まれてきた意味みたいな…」と。
>
> 子供たちの多くは、大人になるにつれて夢を諦めてしまいま
> す。大きくなるにつれ、少しずつ現実的に物事を考えられる
> ようになるし、高校生くらいになると親から、「そんな夢み
> たいなこと言ってないで勉強しなさい!」なんて言われたり
> するので、知らず知らずのうちに、常識的なものがよりよく
> 見える常識色眼鏡をかけてしまうのかもしれません。夢は常
> 識色じゃなないから、きっとぼんやりとしか見えなくなるん
> です。
> だから僕たちは、常識色眼鏡をかけずに夢を現実にしたスポ
> ーツ選手のひたむきな姿や、小説家が紡ぐことばや、画家の
> 描いた絵のように、自分たちが途中から見えなくなってしま
> った夢の世界で生きている人たちに心を動かされるのだと思
> います。
>
> でもね、そんな僕でも、ミロコさんのように生きている実感
> を味わいたいです。
> 生きている実感というのは、自己満足の世界では味わえない
> と思うんです。世の中に役立つことでないと。それってやっ
> ぱり仕事ですよね。
> ミロコさんは「絵を描く」「絵本を作る」という自分の好き
> なことを仕事にして生活されていますが、ここまでくる道の
> りはめちゃくちゃ険しかったと思うんです。常識色眼鏡をか
> けなかった時点でもう苦しかったはず。でも「好き」をやめ
> なかった。苦労を乗り越えられた。
> だから僕も仕事に対して、少々のことではぶれないようにし
> たいです。いやな仕事でもきちんと向き合う。そう議事録書
> きのように。(笑)愚直に仕事に向き合っていれば、いつか必
> ず人に感動を届けられる。そう思って、自分の仕事を好きに
> なる努力をするんです。
> 仕事を「そこそこ好き」になることから始めて、いつの日か
> 「メチャクチャ好き」にできたらきっと、生きている実感を
> 味わえるんじゃないか、ってね。
>
> オオカミがとぶひ ミロコマチコ:著
> イースト・プレス
>
> 追伸
> 2018年度の巖谷小波(イワヤサザナミ)賞をミロコマチコ
> さんが受賞されました。
> 巖谷小波賞は、青少年の文化における先駆的な働きに送られ
> る名誉ある賞です。心から、おめでとうございます。
>
> このメールは、係長さん以下の役職者の方にお送りしていま
> す。