みなさんへ No.31 −当たり前の反対の言葉 知っていますか?− 2019.01.31

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> 平成最後のお正月も終わり、1月も今日でおしまい。
> うちの会社は12月が決算なので、我々の仕事は1月が一番
> 忙しく、ハラハラドキドキする月です。
> ということで、今ちょっと緊張しています。(笑)
> そして、僕にとって、神戸人にとって、1月は、忘れてはな
> らない月です。
>
> 24年前の1月17日、僕は神戸市の兵庫区、JR兵庫駅のそ
> ばの新築の賃貸マンションの2階に住んでいました。
> そして、まだ夜明けには程遠い朝の5時46分、あの地震
> 起きました。
> 当時、妻のお腹の中には、2月の初旬が出産予定日だった僕
> たちの長男がいました。
> 僕は、なぜだか目が覚めていて、あの瞬間を最初から最後ま
> で、全部経験しました。だから余計にそうなのか、昨日のこ
> とのようにありありと覚えています。
> 軽く横に揺れた後、地鳴りのような音がしたかと思ったら、
> アスファルトの道路をドリルで削るような金属音とともに、
> 激しく縦に揺れました。たぶん揺れたのは10数秒だったと
> 思いますが、永遠とも思えるくらい本当に長く感じました。
> 揺れている最中に窓越しに電線が切れて青く光るのが見え、
> 停電したのが分かりました。
> 揺れが収まった瞬間の静寂は忘れられません。静かに波が引
> いていくような静寂。
> その後、いたるところから悲鳴やら怒鳴り声やらが聞こえて
> きて、窓を開けてベランダから外を見たら、うっすらと見え
> るはずのいつも見えているおうちの屋根が、その時は見えな
> かったのです。
> ほとんどの戸建てのお家は、1階が無くなっていました。
> 地震の直後、妻はひどく怯えていて、おなかをさすりなが
> ら、「助けてください神様、お願いします」と何度も繰り返
> していました。
> 夜が明けたベランダから見えるマンションの周りの景色は…
> まったく別の景色になっていました。
> 「助けてくれ!」という大声があちこちから聞こえてきまし
> たが、妻とお腹の中の赤ちゃんのそばにいることで精いっぱ
> いで、僕は何もできませんでした。
> 今でもその行動が正しかったのかと、自問自答します。
>
> その日はずっと家にいて、毛布をかぶって寒さをしのぎまし
> た。
> そして寝ようとした夜の10時頃、家の外の道路からの懐中
> 電灯の明かりでベランダに出てみると、このあたりはガス漏
> れがひどいから、近所の小学校に避難しなさいとのこと。僕
> たちは、貴重品と持てるだけの毛布をもって、近所の小学校
> に避難しました。
> 小学校は停電していなくて明るく、当然ですが、避難した人
> であふれかえっていました。
> しかし、妻のお腹を見た人たちが、少しずつ場所をずらして
> くれて、教室の黒板の下に一人がようやく横になれるスペー
> スを作ってもらい、妻はそこで横になり、僕は壁に背中を預
> け、座ったまま一夜を過ごしました。
> その日神戸は揺り籠のように、何度も何度も強く弱く揺れて
> いました。
> 次の日、幸運にも僕たちは、たまたま加古川の自宅に帰るタ
> クシーの運転手さんに出会い、7時間かけて加古川に住む叔
> 父の家に避難することができ、次の週末、迎えに来た僕の両
> 親とともに妻は僕の実家に行き、そこで1か月後の2月18
> 日、長男を出産しました。
> 長男の成長とともに僕の地震の記憶は少しずつ変化していき
> ますが、干支が二回りしたんだなぁと、奴ももう24歳かと、
> 今年の17日は少ししんみりした気持ちになりました。
>
> あの日から神戸は、復興に向けて動き出すわけですが、0か
> らのスタートどころか、マイナス1,000くらいからのス
> タートだったと思います。
> ちょっと調べてみたのですが、神戸市の復興関連の新規予算
> が0になったのが2007年、12年後なんです。地震の後
> 12年かけてようやくスタート地点に戻ってきたということ
> でしょうか。
> リモコンのスイッチを入れればテレビが点き、給湯ボタンを
> 押せば温かいお湯が出る。
> みなさんは、当たり前のことだと思っているでしょうが、そ
> うではありません。
> 朝、時々駅前のロータリーでお会いする、芦屋の市議会議員
> さんの活動報告のような印刷物に「当たり前」の反対の言葉
> について書いてありました。みなさんはご存知ですか?
> 当たり前の反対の言葉、それは「今有ることが難しい」すな
> わち「有り難し」、そうです、「ありがとう」なのです。
> 日々の生活はどちらかというと単純で、心が動くような出来
> 事はそんなに起こらないかもしれないけれど、今自分の目に
> 映っている景色がいつもと同じことは、当たり前ではないの
> です。もっと言えば、今生きていることは当たり前
> ではないのです。
> いろんな奇跡が重なって、私たちは今ここにいるのです。
> 本当にありがたいことなのです。
>
> 前回のメールで、今年のうちの会社は大変厳しい年になると
> う話をしました。
> 厳しい年になるからこそ、過去と同じことをやっていてはだ
> めだと思います。
> 失敗の経験は新しいことへの取り組みへとつながりやすいで
> すが、成功の経験は引きずりやすい。
> あるお客さんに対しては、この戦略で成功したけれど、別の
> お客さんに同じことをして成功するとは限りません。0から
> のスタートではなく、スキルという武器を一つだけ持って、
> 1から取り組んでみよう。
> そういう本を今読んでいます。ありがたいことに私達にはや
> るべきことがあります。
> 世の中の役に立ってなんぼ、の世界で生きているのですから。
>
> 1からはじめる
> 松浦弥太郎:著 講談社
>
> このメールは、係長さん以下の役職者の方にお送りしていま
> す。