みなさんへ No3 −イノベーションが引き起こす第2のイノベーション− 2016.11.19

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> みなさんへ
>
> 第3回目のメールです。今回は、出会いについてちょっとだけ。
>
> 先日、僕の長男を連れてある方のお店にお邪魔しました。
> 長男は1995年2月生まれ。
> 阪神淡路大震災の1か月後に生まれました。
> 僕たち夫婦は、神戸市兵庫区の賃貸マンションの自宅で被災し、震災の翌日、
> 加古川の自宅まで帰るタクシーの運転手さんに偶然出会うことができ、8時間
> かけて加古川の叔父の家まで連れて行ってもらうことができました。
> この出会いも、神様が助けてくださったような奇跡的な出会いですよね。
> 1か月後、長男は僕の実家がある町の病院で生まれました。神戸は安心して出
> 産ができるような環境ではなかったのです。
> あれから21年、一緒にお酒を飲める年になり、どうしても会わせたかった大
> 切な方に、ようやく会せることができたんです。
>
> その方は、本当に大げさな言い方ではなく、この方に出会ったから今の自分が
> あると心から言える、僕にとって大切な方です。
> お名前は、千頭一心(ちかみいっしん)さん。職業バーテンダー、御年84歳。
> 昔からの持病がおありで、なおかつこのお歳ですし、お店を休まれることも増
> えてきたのですが、今でもお店に立たれる現役のバーテンダーです。
> 僕はこの方に二十歳の時に出会い、30年間、たくさんのことを教わってきま
> した。
> 千頭さん(以下マスター)は、日本を代表するバーテンダーのお一人です。マス
> ターのことを描いた本も出版されているくらいです。
>
> 正統的な本物のBARのことをAuthentic Barと呼ぶのですが、
> オーセンティックバーにはオーセンティックバーであるがための、主と客の間
> に暗黙の約束があります。
> その約束を理解し、守ると宣言した人だけが店のカウンターに座れるんです。
> ですから、オーセンティックバーのドアは格式が高く重厚で、店の中が確認で
> きないため、一元のお客さんは相当な勇気がなければ開けることができません。
> そこが暗黙の約束なんですね。
>
> 「ちゃんとしたバーテンダーが作る酒は、味わいのお酒だから、味がわからな
> くなるほどバーで酒を飲んではいけない。そもそも酔った客にバーテンダー
> 酒をつくらない」
>
> 「バーに並んでいるボトルを勝手に触ってはいけない。ピカピカに輝いている
> ボトルを指紋で汚してしまうことになるからだ。どうしてもボトルを見たかっ
> たら、断りを入れたうえで、注ぎ口の下のラベルのところを持ち、そっと持ち
> 上げ、ボトルの底にもう片方の手の指の先をそえて安定させて見るようにしな
> さい」
>
> などなど。
>
> ボトルの持ち方の話なんて、逆説的にボトルを常にピカピカにしていないバー
> はオーセンティックなバーではない、と言っているんですね。
> それくらい、バーテンダーという仕事にプライドを持っておられるんです。
>
> また、大人の男としての立ち振る舞いについてもいろいろ教わりました。
>
> 「新しいものや流行ばかりを追いかけてはいけない。世の中には普遍的なもの
> がある。それをちゃんとわかる大人になりなさい」
>
> 「大人の男は群れてはだめだ。一人で行動できるようにならなければならない」
>
> マスターは「粋」といのは何かを、まだケツの青い二十歳そこそこの僕に教え
> てくださったのです。
>
> そんなマスターに僕はずっと長男を会わせたくて、どうしてもマスターの作っ
> たお酒を飲ませたくて…
> 僕がマスターに出会った歳に近い長男に、バースーツに身を包んだマスターの
> 立ち振る舞いを見せることができて、逆にマスターに長男を見てもらうことが
> できて、本当にうれしかったです。
>
> 会いたい人には照れずに「会いたい!」と言って、皆さん、会いに行きましょ
> うね。
>
> さて、第3弾でご紹介する本は最近読んだ、とっても面白かったこの本です。
>
> 「世界をつくった6つの革命の物語」〜新・人類進化史〜
>
> 皆さんは、ハチドリを想像できますか?花の蜜を吸う小さな鳥です。このハチ
> ドリは、他の鳥にはない飛ぶ技術を持っています。空中で静止することができ
> る技術、「ホバリング」です。
>
> なぜ、このような技術をハチドリが身に着けたのかというと、先ほどもお話し
> したとおり、花の蜜を吸うためです。
>
> とりあえず、この話は置いておいて、花と蜂や蝶の関係は何となくでもお分か
> りですよね。キーワードは「受粉」です。
> 太古の昔、白亜紀のある時期、花は花粉の存在を昆虫に知らせる手段として、
> 匂いや色を身に着けます。
> それによって昆虫が花に引き付けられ、昆虫についた花粉が飛び交う昆虫たち
> の行動によってめしべにくっつき「受粉」につながるわけです。
> そして花はさらに昆虫たちを引き付けるために、蜜を作り花の中に蓄えるよう
> になります。
> この一連の進化は、長い時間をかけて行われた壮大なロマンであり自然界のイ
> ノベーションです。
> しかし、この壮大なロマンとイノベーションには、ハチドリは出てきません。
>
> 作者のスティーブン・ジョンソンさんはこう言います。
> 「イノベーションは、妥当な予想をはるかに超える、多様な変化を社会に引き
> 起こしている。イノベーションはふつう具体的な問題を解決する試みとして生
> まれるが、いったん広まると、結果的に他の変化を引き起こすことになり、そ
> の変化を予測するのは非常に難しい」
>
> 結果としてハチドリは、昆虫のために花が長い年月をかけて作れるようになっ
> た蜜を吸えるようなホバリングという進化を、こちらも長い年月をかけて成し
> 遂げたんですね。
>
> このように、イノベーションが結果的に他の変化を引き起こすことを、彼は
> 「ハチドリ効果」と呼んでいます。
>
> 6つの革命とは、「ガラス」、「冷たさ」、「音」、「清潔」、「時間」、
「光」。
> これらがどれほど偉大な革命なのか、そしてそれぞれがもたらした「ハチドリ
> 効果」について、この本を開くと、ワクワク感とともに溢れ出してきます。
>
> 少しだけ種明かし。
> 旬のテーマなので、大統領選挙に影響を及ぼした「ハチドリ効果」について。
>
> 家庭用エアコンがアメリカで普及したことにより、過ごしやすい北部から南部
> への移住者が増大し、数百万人の人たちが南部に移住しました。こういった人
> の移動により、大統領選挙の選挙人も北部から南部に移動し、1980年代ま
> でに北部の選挙人が32人減ったのに対し、フロリダやテキサスを代表する南
> 部の選挙人が29人も増える結果となったのだそう。
> この結果、20世紀前半、南部出身の歴代大統領、副大統領はたった2人だっ
> たのですが、1952年から2008年のオバマ、バイデンの大統領、副大統
> 領で途絶えるまで常に、南部出身者が大統領、副大統領のどちらかに選ばれて
> いたということです。
>
> もうひとつ、15世紀、グーテンベルクが発明したといわれている活版印刷技術
> により、一般市民が活字を見る機会が急激に増えました。
> このイノベーションが引き起こした「ハチドリ効果」とは?
>
> こっちについては、ぜひ本で確認してください。立ち読み、借りる、買う、ど
> れでもOK!
> 僕は、こういう本が大好きです。
>
> 「世界をつくった6つの革命の物語」 〜新・人類進化論〜
> スティーブン・ジョンソン著 朝日新聞出版