みなさんへ No.39 -規律がもたらした大きな勝利-

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今回の「みなさんへ」、本当は、別のテーマを考えていました。
紹介する本の著者の他の本を何冊も読んだり、僕なりの考え方をまとめたりと準備をしていました。でも、そんなこといっぺんに吹っ飛んでしまいました。
ラグビー日本代表、やってくれました。世界ランク2位のアイルランドに勝ちました!(拍手)
4年前の南アフリカ戦とは全く違う形で格上を撃破した日本代表、ブレイブブロッサムズは本当に日本の誇りですよね!

現在9月29日10時5分。興奮冷めやらないまま、自分の部屋でこの文章を書いています。
4年前の南アフリカ戦は、ラグビーワールドカップ史上最大のGiant killingと言われた試合。あの試合の興奮は今でも忘れることはありません。
同点で試合を終えるのではなくトライを決めて勝ちにいくという選択をし、成し遂げた桜の勇者たちのことを思い返すだ
けで、熱いものがこみ上げます。
同じGiant killingでも、昨日日本代表がなしえたことは、4年前とは全く違います。
4年前の日本は完全なノーマーク。南アフリカは日本を研究することなく、チョチョイのチョイで勝てると思っていました。でもそうならなから彼らはパニックになり、結果的に日本は南アフリカという世界ランク3位の強豪に勝てたのです。
しかし昨日のアイルランドは開催国である日本を研究し、ベストな布陣で日本をぶっ潰しに来ました。
自分たちの強みであるフォワードで圧倒し、日本のスタミナを奪いながらジリジリジリと陣地を奪う作戦。この作戦で、昨年オールブラックスにも勝っているんです。
しかし我らが日本代表、全く引けを取りませんでした。二人掛かりの低いタックル、相手を止めればすぐに立ち上がり、次の自分の仕事にとりかかる。愚直にこれを繰り返しました。
事実、アイルランドは2トライを上げたのですが、キックパスとハイパントによるトライで、フォワードで崩してのトライはゼロ。
さらに絶対的な自信を持っていたスクラムでも日本を押すことができないものだから、彼らはパニックになり、結局自分たちのスタミナが切れ、足が動かなくなりました。スクラムをリードしていた稲垣選手、泣いてましたよね。僕ももらい泣きしてしまいました。
前半を田村選手のペナルティキック3発、9対12で折り返すと、後半は10対0の完封。途中から入った快速ウイング福岡選手のトライで逆転しました。
80分間最後まで日本の素早い動きが衰えなかったからこそ、成し遂げられた大仕事でした。

以前、この「皆さんへ」で、負けた時の悔しさが一番半端ないスポーツは、ずばり格闘技ではないか、と書いたことがありますが、最も番狂わせが起きにくいスポーツは何か?と時々考えます。僕は、ずばりラグビーだと思っていす。体の接触がり、たくさん得点が入る球技こそ、実力が劣るチームは格上のチームに勝つのは相当むつかしいはずです。
僕はバスケットボールをやっていたのですが、バスケも体の接触がありたくさん得点の入るスポーツ。だからバスケも番狂わせが起こりにくいと思うのですが、よりコンタクトの強いラグビーのほうが上だと思います。だから、日本代表は勝つべくして勝ったのです。
逆に最も番狂わせが起こりやすいと思うのは、体の接触があり得点が入りにくい球技…サッカーだと思うんです。サッカーは体を張って相手をゼロに抑えることができれば、カウンター1発で勝てる可能性がありますから。

さて、ラグビーというキーワードでよく聞くフレーズありますよね、そう、
「One for all, All for one」
「一人はみんなのために、みんなは一人にために」
僕はそう訳していました。実は、この訳し方正確ではないそうです。正確には、
「一人はみんなのために、みんなはひとつの目的のために」
なんだそう。なんかよりカッコよくないでか?
目的とは、もちろん勝利。
ひとりひとりは、チームのために自分の仕事を献身的に行い、チームは勝利に向かってひとつになること…
今の日本代表には、現在過去を合わせると外国籍の選手が15人もいます。だからこそ、チームがひとつになるためには「規律」が必要だと、自身もそうであるリーチマイケル選手が言っています。生活文化の違う強者達に、仲間を尊重すること、仲間を信じること、そして日本のために自らを犠牲にすることを共有することは、本当に大変だったでしょう。
「自ら」が大切なんです。自分から進んでするのです。

こういう話をしていると、頭の中に思い浮かぶ、物語の中のヒーローがいます。
そのヒーローの名はスペンサー。ボストンの探偵です。
探偵というと、女たらしで、乱れた生活をし、タバコをふかし、酒を浴びるように飲み、めっちゃ不健康というイメージがあるかもしれませんが、スペンサーはめちゃくちゃ健康的。
ジムに通い、自分で食事を作り、酒は飲みますが、タバコは吸いません。もともとプロボクサーで、辞めて何十年もたつというのに、今でも筋肉は太くしなやかでタフ。精神科医の恋人スーザンを生涯かけて愛すると誓い、言い寄ってくる魅力的な女性には見向きもしない男…こんなふうに書いていますが、これらのことは、スペンサーが自らに課した「規律」に基づく努力によるものなのです。
楽な方になびくのは、人としてある意味当たり前。誰のために、何のために自分は今努力しているのか。その努力はどこへ、誰へ向いているのか。それさえきちんと自覚すれば、自らに「規律」を与えられるはずです。簡単じゃないかもしれないけれど、一つのチームになるためには「規律」ってとても大切なキーワードだと僕は思うんです。

初秋 Early Autumn (スペンサーシリーズ)
ロバート・B・パーカー:著 菊池光:訳 ハヤカワ文庫